トップページ > 先進医療

診療受付時間

*予約外又は紹介状がない方 平日 8:30~11:30 *紹介状をお持ちの方 平日 8:30~14:00 *土曜 8:30~11:00
 
  • 教室について
  • 診療案内
  • 患者さんへ
  • 医療関係者へ
  • 研修医・医学生
  • 高度医療
交通のご案内・マップはこちら
近畿大学医学部泌尿器科学教室 公式Facebook
泌尿器科学教室 スタッフブログ
近畿大学医学部泌尿器科教室はスマートフォン/タブレットも対応しています。

高度医療

がんペプチドワクチン療法とは

 人のからだは元来、病気と戦う力が備わっています。その一つが“免疫”です。
免疫とは、自己(自分の身体の細胞)と非自己(身体の外から侵入した異物:ウイルス、細菌など)を区別し、非自己を速やかに身体から排除しようとするシステムのことです。
“がん細胞”も元々は自分の身体の細胞ですが、勝手気ままに増殖を繰り返すため、免疫は“非自己”と認識し排除しようとします。

 では、「がん」を例に、ペプチドワクチン療法の仕組みについて具体的に説明します。

人の身体の中で、免疫の中心を担当するのはリンパ球です。このリンパ球のうちの、キラーT細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTLとも呼ばれます)などが中心になって「がん」に抵抗します。
このしくみについては既に科学的に解明されています。キラーT細胞ががん細胞の表面の小さな蛋白質のかけらを見つけ、その蛋白質を目印としてがん細胞を攻撃し、その結果、がん細胞を死へと追いやります。
この目印となる小さな蛋白質を「抗原」といい、キラーT細胞はこの抗原の中のごく小さな断片を見つけだします。
一般に蛋白は、数百~数千個のアミノ酸でできているのですが、キラーT細胞が見つけだすのはアミノ酸9~10個でできた部分です。
このごく小さな断片を「ペプチド」と呼び、私たちはこれまでにキラーT細胞ががん細胞を排除する時の目印となる「ペプチド」を200種類以上見つけだしています。
この小さなペプチドは人工的に合成することが可能で、体内に投与すると、ペプチドによって刺激を受けたキラーT細胞が活性化し、さらに増殖してがん細胞を攻撃するようになります。
この性質を使って「がん」を排除させようとする治療法を「がんワクチン療法」といい、「ペプチド」を薬剤として使用する治療法を「がんペプチドワクチン療法」と呼びます。
「ペプチド」にはいろいろの種類があるので、それぞれの患者さんに適した「ペプチド」を用いるのを「テーラーメイドがんペプチドワクチン療法」と呼んでいます。
久留米大学病院で今までに実施された探索的臨床研究で、「テーラーメイドがんペプチドワクチン療法」の副作用や臨床効果が調べられており、前立腺がん患者さんの生存期間を延長する効果が示されています。

前立腺がんの標準治療、臨床試験の対象者について

 前立腺がんの治療法には、手術療法、放射線療法、ホルモン療法があります。
あなたの病気はホルモン療法が効かなくなった状態の前立腺がん(再燃前立腺がん)です。
このような場合、ホルモンの種類を女性ホルモンなどに変えたりしますが、それでも効果がない場合には抗がん剤治療が試みられます。
最近、ドセタキセルという新しい抗がん剤を用いることにより従来の抗がん剤治療よりも2-3ヶ月程度生存期間が延長したという報告があり、ドセタキセルを用いる治療が再燃前立腺がんに対する世界的な標準治療となりつつあります。
しかし、前立腺がんの患者さんは比較的高齢の方が多いことから、患者さんの腎臓機能や全身状態などがドセタキセル治療を行うのに適さない場合があります。それらの患者さんに対しては現時点では標準的な治療法はまだ開発されておらず、最適支持療法(ベストサポーティブケアとも言います)と呼ばれる痛みを和らげたり、生活の質を向上させる治療が行われます。

 今回の臨床試験はそのようなドセタキセル治療が適さずに最適支持療法を受けている患者さんを対象としています。

臨床試験の目的

 今回の臨床試験はドセタキセル治療が適さずに最適支持療法を受けている患者さんを対象としてテーラーメイドがんペプチドワクチン療法の効果を調べるのが目的です。

 テーラーメイドがんペプチドワクチン療法を受けた患者さんの生存期間、がんの進行が抑えられた期間、がんの大きさの変化などをしらべ、他の病院でペプチドワクチン治療を受けていない支持療法のみの患者さんのものと比較することでテーラーメイドがんペプチドワクチン療法の治療効果を検討します。これにより、再燃前立腺がんの患者さんに対する新しい治療法の開発を目指します。

臨床試験と高度医療評価制度について

 (1)臨床試験とは、新しい薬や治療法を開発することを目的に、それまでの医学的研究の結果が正しいかどうか、人に対して試み、科学的に評価を行う研究です。

 臨床試験は、①新しい治療法や薬の初期開発のために医師らが行う探索的臨床研究と、②製薬会社などが行う治験(厚生労働省への医薬品承認申請(保険適応の薬)のため)とがあります。
どちらの場合も、人に対して試すのですから、倫理的なことや研究姿勢などに関して厳格な体制が求められ、第三者によるきびしい審査が行われます。

 臨床試験で試される新しい薬や治療法は「最先端ですべて良いもの」という印象をうけやすいものです。しかし、臨床試験はあくまでも過去の研究や動物での結果から良いものだろうと判断された薬の安全性や有効性を確かめるものですから、必ずしも参加した患者さんにとって「有益であるとは限りません」。
しかし、これらの結果や成果は、「将来の別の患者さんの助け」になるものであり、参加された患者さんたちの御協力なしには新しい薬や治療法の開発は行えません。

 (2)厚生労働省からまだ医薬品としての承認を受けていない未承認薬を使用する臨床試験では、同時に行われる他の治療も含めてすべての診療・医療行為に対して健康保険の適用はできません(混合診療の禁止)。

 しかし未承認薬を使用する臨床試験であっても、安全性や効果が期待しうる診断・治療と評価された場合には大学病院など特定の医療機関で混合診療を行うことが認められています。
これを高度医療評価制度といいます。今回の臨床試験は厚生労働省から高度医療として承認されたものであり、ペプチドワクチン療法と一部の検査(ヒト白血球抗原検査、免疫検査)に係る費用は患者さんの自己負担ですが、同時に行う他の医療行為に対しては健康保険の適用が認められます。
これにより従来の臨床試験に比べ患者さんの自己負担が軽減されます。具体的には患者さんが負担する金額は合計でワクチン治療代約55万円くらい(別途保険診療代が必要)になります。

この臨床試験についてのご質問、お問い合わせはこちらまで
(月・火・木・金曜日 9:00から17:00)

近畿大学医学部泌尿器科 Tel 072-366-0221(内線:3524、3522)

リサーチナース 永江幸子 西垣こずえ

ページトップへ