近畿大学医学部泌尿器科学教室の歴史は、1974年に初代 故栗田孝教授が大阪大学より赴任されたことから始まりました。 診療面で泌尿器科全般のprofessionalを目指し、そのうえで各人得意な分野のexpertになれという栗田教授の指導理念のもと、結石グループ、神経・排尿グループ、腎移植グループ、腫瘍グループの各グループで切磋琢磨し昼夜を問わず研究に没頭されていました。 まずは、各グループの変革についてご説明いたします。
結石グループは、八竹直先生(前 旭川医科大学教授および学長)や郡健二郎先生(名古屋市立大学理事長・学長)、井口正典先生(市立貝塚病院名誉院長)らを中心として結成されました。 特筆すべき研究としては、結石マトリックスをクローニングすることにより、現在では結石成因のひとつとして一般的となったオステオポンチンを世界で初めて報告しました。 また、1997年9月には、栗田孝教授を会長として第7回日本尿路結石症研究会が開催されました。
神経・排尿グループは、八竹直先生、故南光二先生、金子茂男先生(前 旭川医科大学助教授、北彩都病院副院長)、朴英哲先生(前 近畿大学講師、ぼく泌尿器科クリニック顧問)らを中心に、当時はまだ日本に導入された直後のウロダイナミクス機器をいち早く導入し排尿機能検査に関する発表・論文報告が次々に行われました。 また1998年10月には、第5回日本神経因性膀胱学会が栗田孝先生を会長として開催されました。
栗田孝先生のご専門でもあった腎移植グループは、秋山隆弘先生(前 近畿大学堺病院教授、温心会病院院長)、松浦健先生(前 近畿大学助教授、松原徳洲会病院顧問)、国方聖司先生(近畿大学奈良病院教授)、神田英憲先生(阪和第2病院院長)らを中心に免疫学や腎保存法、超音波ドップラー診断学など、移植領域の幅広い分野での研究が行われました。 また、1997年9月には、栗田孝会長のもと、第33回日本移植学会総会が開催されました。
腫瘍グループは、故門脇照雄先生(前 富田林病院副院長)、永井信夫先生(前 耳原総合病院部長)らにより結成され、膀胱腫瘍や腎がん、前立腺がんなどの泌尿器腫瘍学のなかでも特に膀胱腫瘍と凝固線溶系との関連性について多数の報告が行われました。
これら各グループが一致団結し、ついに1999年4月、第87回日本泌尿器科学会総会が栗田孝先生を会長として開催されました。 総演題数952題、「21世紀への架け橋」をテーマとして国内だけでなく海外からの招請講演も行われ、当時は、まだ始まったばかりのクローン技術や遺伝子研究などの先進技術に関して将来的な展望も交えた講演が行われ、一般演題も含め成功裡に終わりました。
2004年には、第2代植村天受教授が奈良県立医科大学より就任され、植村教授のご専門である腫瘍、特に腎がんに関する研究が大きく飛躍しました。 教室には、3名のリサーチナースと6名の研究助手が在籍し、腎がんに対するぺプチドワクチンなどが研究室で作成できるようになり、まさしくBench to bedsideが日々行われるようになりました。
また、2013年10月には、第10回URS会議が植村天受教授を会長として開催されました。2020年には第33回老年泌尿器科学会、2022年11月には第36回日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会総会を主催しました。
2024年4月から第3代教授に当教室の准教授であった藤田和利が就任しました。専門分野である癌、生殖医療だけでなく、腎移植、排尿、結石に関しても更なる発展をするよう頑張っていく所存です。
2015年に国方聖司先生が近畿大学医学部奈良病院教授に、2010年には西岡伯先生が近畿大学堺病院泌尿器科教授、2014年には吉村一宏先生が近畿大学泌尿器科教授に昇任となり国方先生、西岡先生の専門である腎移植や、吉村先生の専門である内視鏡外科の分野で活躍しています。
近畿大学病院は2025年11月(予定)に現在の大阪狭山市から堺市の泉北ニュータウンへの移転が決定しています。 新設の病院は約1000床で予定されており、高度ながん治療施設を有する南河内地域の基幹病院となります。 近畿大学の発展とともに、われわれ泌尿器科学教室も大きく飛躍することが期待されています。
当教室は、腎癌、副腎癌、前立腺癌、尿路上皮癌(膀胱癌、腎盂尿管癌)、精巣癌の泌尿器腫瘍に対する手術・薬物治療に対して精力的に取り組んでいます。
最近では、低侵襲手術であるロボット手術(ダビンチXi、ヒノトリ)を積極的に行っているだけでなく、前立腺癌に対する小線源治療も日本屈指の症例数を誇っています。
その他にも腎移植、排尿、生殖医療、尿路結石症、感染症などの治療に関しても幅広く対応しております。
当教室は、臨床だけでなく、研究、教育にも邁進していき、泌尿器科学分野の発展に貢献していきたいと考えております。
近畿大学医学部泌尿器科講座の藤田和利です。
2024年4月から教室の主任を担当しております。
近畿大学医学部泌尿器科講座は初代栗田孝教授が腎移植、尿路結石、排尿障害の分野で礎を築かれ、2代目植村天受教授が泌尿器腫瘍学を発展させられました。
2025年に50周年を迎え、二人の国立大学学長をはじめとする多くの優秀な人材を輩出してきた伝統ある教室です。
近畿大学は南大阪唯一の大学病院であり、幅広い医療圏をカバーしています。
日本でトップクラスの泌尿器科講座を目指し、泌尿器科腫瘍学を中心にアンドロロジー(生殖医療)、腎移植、尿路結石、排尿障害の分野で臨床、研究を一体として行い発展させていきます。
また国際交流にも力を入れ、留学や国際共同研究を積極的に行いながら、和気藹々とした講座運営を行い、個々の医師が活躍できるよう教育をしていきます。
よろしくお願いいたします。