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患者さんへ

実施中の臨床試験
治験Ⅰ
治験課題名

アストラゼネカ株式会社の依頼による筋層非浸潤性膀胱癌患者を対象とした第Ⅲ相試験

対象疾患

膀胱癌

登録期間

未公開

治験Ⅱ
治験課題名

ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社の依頼による腎細胞がん患者を対象とした第Ⅲ相試験

対象疾患

根治的腎摘除術又は腎部分切除術後の限局性腎細胞がん

登録期間

2020年6月末終了予定

治験Ⅲ
治験課題名

新規ホルモン製剤による前治療が無効であった相同組換え修復関連遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺癌患者に対するオラパリブ(Lynparza)の有効性と安全性をエンザルタミド又はアビラテロン酢酸エステルと比較して評価する無作為割付け非盲検第3相試験(PROfound)

対象疾患

前立腺癌

登録期間

未公開

治験Ⅳ
治験課題名

中外製薬株式会社の依頼による腎細胞癌患者を対象としたATEZOLIZUMABの第Ⅲ相臨床試験

対象疾患

腎癌

登録期間

2019年8月末終了予定

治験Ⅴ
治験課題名

プラチナ製剤を含む一次化学療法完了後に進行が認められていない局所進行または転移性の尿路上皮癌患者を対象に、維持療法として治験薬およびBEST SUPPORTIVE CAREの併用療法とBEST SUPPORTIVE CARE単独療法を比較する第3相多施設、国際共同、無作為化、非盲検、並行群間試験

対象疾患

尿路上皮癌

登録期間

2018年12月末終了予定

腎癌について

本邦において腎がんに罹患する人は年々増加にあり、また腎がんによって死亡する人も増加傾向にあります。腎臓は背中側の両側にある直径約12cmのそら豆状の臓器です。毎年10万人あたり8~10人程度の発生率と言われおり、現在増加傾向にある癌です。年齢では40歳代から70歳代に多く発症します。男女比は2:1ぐらいです。比較的少ないがんではありますが、肺や骨に転移しやすい性質を有しています。

腎にできる腫瘍の中には腎血管筋脂肪腫といった良性腫瘍もありますが、約90%が腎悪性腫瘍、腎癌(腎細胞癌)です。腎盂粘膜より発生する腎盂腫瘍(腎盂癌)もありますが、これに関しては別項で説明します。
 腎癌の発生する原因は、喫煙、性 ホルモン、透析などが危険因子として知られています。古典的、教科書的な症状としては、血尿、腹部腫瘤(しこり)、側腹部痛で診断されることもありますが、症状が出にくく、前述のような症状発現時には進行期の場合があります。近年において人間ドックや癌検診での超音波検査で偶然発見される患者さんが増えてきています。

(診断)

腎がんは一般的に造影CT画像検査で確定診断され、同時にがんの拡がり(局所の浸潤度や遠隔転移の有無)も診断されます。MRI検査、核医学検査、血管造影検査等は腫瘍の状態により施行する場合があります。

(治療)

腎がんは切除不能例や、全身状態不良等の理由での手術施行困難例等を除き、基本的には手術療法が最も有効と考えられています。手術の場合、全身の評価行います(心電図、呼吸機能等をチェックし麻酔が可能か評価します)。腎腫瘍の長径が4cm以下であれば、腫瘍のみを取り出す腎部分切除術も考慮されますが、それ以上の大きさのものでは腎臓をすべて摘出する根治的腎摘除術が必要です。

近年普及した腹腔鏡手術は小さな傷で腫瘍を摘出することが可能です。痛みも少なく、術後の早期回復を望めます。手術適応としては、原則腫瘍の大きさが直径7cm以下のものとしています。全摘除術だけでなく、部分切除も可能です。当院においても腹腔鏡手術を全般に取り入れており、年間症例数は腎臓のみでも平均30~40例にのぼり、良好な成績です(詳細は他項目参照下さい)。

診断当初から転移を有する進行性腎癌の症例や、手術不能症例、術後再発症例に関しては、従来からのインターフェロンα治療のほか、2006年から分子標的治療薬が登場し急速な発展を遂げております。2014年1月現在、本邦において使用可能な分子標的剤は5種類にも増え、使用選択枝は多岐にわたります。当院は数多くの分子標的剤の使用経験数を誇っており、症例に応じた薬剤選択を実施しております。

また、腎癌に関しても積極的に臨床試験も実施しております。臨床試験に関しては他項目を参照ください。

膀胱癌について
膀胱癌
症状

主に血尿、膀胱刺激症状(頻尿・排尿時痛・残尿感)があります。

診断

膀胱鏡で腫瘍の存在が確認された場合、経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)を行い、切除した腫瘍の病理組織学的(顕微鏡)検査にて膀胱癌と診断します。また画像検査(CT,MRIなど)で病期(stage)診断を行います。

治療

膀胱癌は尿路上皮から発生し、大きく表在性膀胱癌と浸潤性膀胱癌に分類されます。
表在性膀胱癌の多くは経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)で治療可能といわれています。しかし表在性膀胱癌は再発しやすく、再発頻度の高い場合や多発性の場合には再発予防を目的として抗癌剤やBCGの膀胱内注入療法を行います。表在性の中でも上皮内癌の場合はBCG膀胱内注入療法が適応となります。

浸潤性膀胱癌の標準的治療は膀胱全摘除術ですが、術前もしくは術後に全身化学療法(抗癌剤治療)を行うことがあります。膀胱全摘除術に伴い尿路変向術が必要になりますが、腸管を利用する回腸導管造設術、自然排尿型新膀胱造設術(Hautmann法またはStuder法)や、腸管を利用しない尿管皮膚瘻造設術を行います。また膀胱全摘除術ができない場合・希望されない場合にはTUR-Bt・化学療法・放射線療法などを組み合わせた集学的治療による膀胱温存療法も行っています。患者さんの年齢、体力、適応、QOLに応じて治療方針を決定します。

腎盂・尿管癌
症状

症状として主に血尿、側腹部痛(水腎症による)があります。

診断

画像診断(静脈性尿路造影,逆行性腎盂尿管造影,CTなど)で腎盂・尿管腫瘍の検出、病期診断(stage)を行います。腫瘍の存在する側の腎盂・尿管からの尿細胞診や、場合によっては尿管鏡検査で腎盂・尿管腫瘍の生検を行い診断します。

治療

膀胱がんと同じく尿路上皮から発生します。腎盂・尿管は膀胱に比べて壁が薄く、特に悪性度の高い癌は早期に浸潤・転移をきたします。泌尿生殖器癌のなかで最も予後不良な癌です。遠隔転移を認めず切除可能であれば腎・尿管全摘除術が適応となりますが、当院ではほとんどの症例で鏡視下手術を行っています。
再発予防の目的で術後に膀胱癌治療と同様の全身化学療法(抗癌剤治療)や放射線療法を行うことがあります。診断時に大きなリンパ節転移や遠隔転移を認めても化学療法が著効し、その後手術で完全切除が可能な場合もあります。

前立腺癌について
はじめに

近年、食生活の欧米化や高齢化に伴い日本においても前立腺癌は増加の一途を辿っており、2020年には男性の癌の罹患率1位になることが予測されています。

当教室では前立腺癌の根治を目指すべく日々努力をしております。そのためには患者さまの前立腺癌の状態に応じた適切な治療方針を選択する事が大事になってきます。
ここでは当教室における前立腺癌の特徴・診断・治療に関して解説します。

1.前立腺癌の特徴
・症状は?

初期の前立腺癌は自覚症状がほとんどありません。これは前立腺被膜(前立腺の外側)に癌が発生する事が多いため、尿道や膀胱を圧迫して排尿障害を来たしにくいからです。しかし、前立腺癌に気付かないでいると骨などに転移し痛みが出てくる事があります。

・前立腺癌の成長は?

一般的には前立腺癌の増殖は他の癌に比べると遅いと言われています。他の病気で亡くなられた高齢者の方を解剖した際に発見されなかった前立腺癌が見つかる事も少なくないです。しかし癌の顔つき(グリソンスコア)が悪いものでは増殖が速い傾向にあります。

2.前立腺癌の診断
・PSA検査

血液検査でPSAという前立腺から分泌される物質を測定します。一般的にはPSAが4ng/ml以上の患者さまは前立腺癌の可能性が20%以上あるといわれており、精密検査が勧められます。

・直腸診

肛門から示指を入れ前立腺を触診します。前立腺表面の硬さで癌の存在を調べます。

・MRI

レントゲン検査のひとつで前立腺癌があればその部位に異常が認められます。
初期癌の場合はわかりにくいことが多いです。

・前立腺組織生検

上記の検査で癌の疑いがある患者さまに行います。下半身麻酔をかけ会陰部から前立腺に針を刺し、組織を採取します。血尿、感染症などの合併症も数%ありますので、安全のため入院で行います。この検査で癌の有無、および癌の顔つき(グリソンスコア)を調べます。

・病期診断

前立腺癌と診断された患者さまは、癌がどの程度進行しているかを調べるためCT、骨シンチが必要になります。この検査で1)前立腺癌の大きさ、2)周囲のリンパ節への転移、3)骨への転移が判明し患者さまの癌の状態を把握します。

3.前立腺癌の治療

前立腺癌の治療法にはいくつかの選択肢があり、根治性、患者さまの生活の質(QOL)を考慮し決定する必要があります。治療方針は癌の病期、グリソンスコア、患者さまの年齢、全身状態等を総合的に判断し、医師と患者さまの間で話し合い決定します。

治療方針

・手術療法(根治的前立腺全摘除術)
・放射線治療
・ホルモン治療
・経過観察

1.根治的前立腺全摘除術

癌が前立腺にとどまっている患者さまが対象になります。手術のアプローチとしては開腹および腹腔鏡があります。当院では2013年より手術支援ロボット「ダヴィンチSi」を導入しており、従来の開腹手術では困難であった複雑な操作が可能となっています。手術療法の長所としては癌細胞を完全に摘出でき根治の可能性が高い事があげられます。また短所としては手術合併症(出血、腸管損傷)、術後合併症(勃起不全、尿失禁)等があります。

2.放射線治療

癌が前立腺にとどまっている患者さまが対象になります。外照射(体の外から放射線をあてる)ものと内照射(前立腺の中に放射線物質を埋め込む)に分けられます。早期の前立腺癌に関しては手術に比べ遜色のない治療効果が認められます。放射線治療の長所としては合併症を含めた治療後のQOLが高い事があげられます。短所としては放射線治療の晩期合併症としての直腸潰瘍、出血性膀胱炎、尿道狭窄等があります。

3.ホルモン治療

前立腺癌は男性ホルモンに依存して増殖するという性質をもっています。この作用をブロックすることで前立腺癌の増殖を抑えます。副作用として女性の更年期障害のような症状が出たり、長期治療で骨粗鬆症を起こしやすくなります。また個人差もありますが治療効果も永続的ではなく、数年で効果がなくなる事が多いです。

最後に

前立腺癌は個々の患者さまの状態で治療方針、予後が大きく変わります。当院ではこれを考慮し最適な治療を患者さまと相談しながら決定しています。

精巣腫瘍について

男性の精巣(睾丸)にできる腫瘍で、15~35歳の男性に多い腫瘍で多くは悪性です。10万人に1人を占める比較的まれな疾患ではありますが若年発症の悪性腫瘍として看過できない疾患です。我が国における精巣腫瘍の死亡数は年間100例程度とされていますがそのうち40歳未満の方が2/3を占めます。精巣腫瘍による死亡が、がんで亡くなる人全体に占める割合は0.1%未満と少なく、比較的予後のよいがんの部類に入ります。成人発生の場合、転移を有する進行例での長期生存率をみると1970年代頃には25%であったものが最近では90%以上と向上しています。その理由としては早期発見や化学療法の発展から、初発時にある程度進行した例でも根治に導くことができるようになったことが大きいと言えます。

・症状

最もよくみられる症状は陰嚢が痛みなく腫れてきたり、陰嚢内容の腫瘤触知です。また、腫瘍が出血など起こした場合は精巣痛を認める場合もあります。転移があった場合転移先により症状は異なりますが、肺転移であれば咳、血痰、息切れ、胸痛、後腹膜リンパ節であれば胃腸症状、腹部腫瘤、体重減少などもみられることがあります。

・診断・検査
1.画像診断

超音波断層診断で精巣内部の観察を行います。あわせてレントゲン検査やCT、PET-CT検査で肺やリンパ節への転移の有無、腫瘍の状態や周辺臓器への広がりも同時にみます。骨シンチグラフィーで骨転移の有無も調べます。また状況に応じてMRI検査も行うこともあります。

2.血液検査

すべての症例で必ず上昇するというわけではありませんが精巣腫瘍にも腫瘍マーカーと呼ばれる指標が存在します。腫瘍の種類の判断や治療の際の目安にもなるため重要な検査の1つとなります。AFP、hCG、LDHが該当します。ただ、これらは精巣腫瘍に特異的というわけではなく他の腫瘍性疾患などでも上昇することがあります。

・治療

精巣腫瘍は進行が早く転移しやすいという特徴に加えて、画像診断・血液検査だけでは腫瘍の細かな分類まではわからないということもありできるだけ早く精巣腫瘍を摘出することになります。摘出した腫瘍を、病理診断といって腫瘍を顕微鏡で調べる検査に提出します。その病理診断の結果と画像診断や血液検査の結果をもとに治療方針を決定します。
たとえ転移が認められた場合でも化学療法(抗がん剤)や放射線療法、残存腫瘍に対する手術療法を組み合わせることにより70~80%で完治が期待できると言われています。

一方で、いかに化学療法や放射線療法を駆使しようとも治療困難な例があることは確かです。パクリタキセル、ゲムシタビン、イリノテカンなどの従来の抗がん剤と作用機序の異なる抗がん剤が臨床応用されています。

腎移植について
■慢性腎不全を起こす病気

慢性腎不全から透析に至る原因となる病気は、現在では糖尿病性腎症がもっとも多く38%、
糖尿病性腎症から透析に至る人は近年増え続けており、最近10年間で2倍近くに増加しています。

■腎不全の治療
①血液透析

血液を体外に取り出し、ダイアライザーと呼ばれる透析器(人工の膜)に通す事によって、血液中の不要な老廃物や水分を取り除き、血液を浄化する療法です。

②腹膜透析

自分自身の「腹膜」を血液浄化用のフィルターとして用いる透析療法の一種。腹膜透析では血液透析のように血液を体外に出すことはありません。透析液を腹に出し入れする「バッグ交換」を1日3回~5回行うことにより、老廃物を排泄します。

③腎移植

移植外科医が手術を行い、別の人の健康な腎臓を患者の体に移植します。

■腎不全の治療の比較
  血液透折 腹膜透折 腎移植
腎機能の代償程度 部分的で10%程度 部分的で10%程度 かなり正常に近い
腎機能の代償時間 4時間×3回/週 連続的 連続的
内分泌機能 なし
投薬で不完全代償
なし
投薬で不完全代償
正常に近い
生活の制約 多い やや多い ほとんどない
社会復帰率 制約される 比較的良い 高い
食事・水分制限 強い やや多い 少ない
免疫抑制剤 不要 不要 不可欠
通院回数 3回/週 1回/月 1回/1~2月
出産 きわめて難しい きわめて難しい 可能
必要な手術 シャント造設 カテーテル留置 腎移植
長期治療 可能(10年以上) 従来法では不可能 可能(10年以上)
最大の問題 長期透折合併症 腹膜炎 ドナーが必要
その他の問題 ブラッドアクセス維持 カテーテルトラブル 拒絶反応の危機
重篤な感染の危機
■腎移植について
①生体腎移植

腎臓を提供できる方はご家族の方(夫婦間も含む)で自らの意思で腎臓の提供を希望されている方になります。腎臓を片側提供するので腎臓の機能が正常であることはもちろん、健康体であることが必要になります。
日本移植学会の倫理指針では、生体移植では、親族からの提供に限るとされており、親族とは、6親等以内の血族、3親等以内の姻族と定義されています。

②献腎移植

献腎移植とは、亡くなられた方から腎臓を提供していただく移植のことです。献腎移植には心臓死からの移植と脳死からの移植があります。献腎移植を希望される場合には、臓器移植ネットワークにあらかじめ登録する必要があります。
日本臓器移植ネットワークに献腎移植の登録を行います。腎臓の提供者が出た場合、登録されている方の血液型と白血球の血液型との適合度を調べ、適合度の高い人に腎臓が移植されます。

■生体腎移植術について
①レシピエント(臓器を頂く患者様)

近年免疫抑制剤の進歩により、血液型が同じでなくても生体腎移植術を行うことが可能になりました。手術2日前に入院して頂きます。手術時間は約4時間で入院期間は約3週間です。腎臓は通常右下腹部に移植します。また免疫抑制剤は一生内服しなければいけません。また移植腎が10年間正常に機能する確率は約90%です。

②ドナー(臓器を提供する患者様)

通常左腎臓を摘出します。内視鏡を使用して腎臓を摘出します。
約1cmの傷が3カ所、7cmの傷が1カ所(腎臓を取り出す傷)で入院期間は約1週間です。

■最後に

透析療法には大きく分けて血液透析と腹膜透析がありますが、いずれも時間的制約が大きいことと腎臓の一部分の役割しか果たさないことが問題になっています。それに対し腎移植後は失われた腎臓の機能はほぼ完全に回復し、時間に縛られることもありませんし、食事も自由に食べられます。腎移植を希望される方は当科を受診していただければと思います。

前立腺肥大症について

前立腺肥大症の概念は時代とともに大きく変遷し、以前は前立腺肥大症によって排尿ができなくなり、水腎症(腎臓が腫れる)や腎後性腎不全(尿が下に流れず腎不全となる)など状況によっては生命を脅かす疾患と考えられてきましたが、現在では健康意識の向上により比較的軽症な患者さまも受診し多様化しており、下部尿路症状(lower urinary tract symptoms: LUTS)により高齢男性の生活の質を落とすQOL(Quality Of Life) 疾患として位置付けられています。

前立腺肥大症に対する薬物療法は多様化しており、投与できる薬剤も多様化しており、個々の病態に応じた投薬の組み合わせが行われています。投薬加療で症状が落ち着けば継続もしくは休薬を考え、症状の改善がなく悪化する場合には手術を考慮します。

診断
①尿検査

血尿の存在は尿路結石や膀胱癌の、膿尿存在は尿路感染の可能性を考えます。

②血清PSA

一般的に4ng/ml以上が異常値とされますが、癌、肥大症、前立腺炎でも上昇し年齢とともに上昇もするので鑑別が必要です。また尿閉時(まったくおしっこが出ない状態)は上昇しますので後日に改めて測定します。

③排尿日誌

頻尿、夜間頻尿の著明な症例に有用です。夜間尿量が33%以上を夜間多尿といいます。
来院される前に2-3日記載したものを持参していただくと診察がスムースになります。排尿日誌は以下アドレスより取り込むことが可能です。
http://japanese-continence-society.kenkyuukai.jp/special/?id=15894

④下部尿路症状の定量化

問診票を用います。昼間頻尿・尿意切迫感・夜間頻尿(蓄尿症状)、尿勢低下、腹圧排尿(排尿症状)、残尿感(排尿後症状)の7つの下部尿路症状の頻度を0点(全くない)から5点(ほとんどいつも)までの6段階に評価し、これらの合計点を算出し重症度を判定します。軽症(0-7点)、中等症(8-19点)、重症(20-35点)。

治療

・薬物療法

アルファ1遮断薬

塩酸タムスロシン(ハルナール®、シロドシン(ユリーフ®ナフトピジル(フリバス®がまずは第一選択薬となります。

②5アルファ還元酵素阻害薬

デュタステリド(アボルブ®は新しいタイプのBPH治療薬です。広義の抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬)ともいえますが、既存のホルモン系薬剤とは作用の仕方が違います。アルファ1遮断薬とは異なり、肥大した前立腺そのものを小さくします。また、従来の抗アンドロゲン薬に比べ、副作用の軽減がはかれます。

③植物製剤

抗炎症作用、排尿を促進する作用、前立腺組織の肥大を改善する作用、尿路を殺菌する作用があると言われます。アルファ1遮断薬よりは効果は劣りますが併用にて有用との報告も認めます。副作用はほとんど無いとされています。

④抗コリン剤

前立腺肥大症に対して単独で用いる事はありません。アルファ1遮断薬を用いて治療を行っていても頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿などの症状が残る場合に上乗せし併用します。但し、抗コリン薬を通常量で男性に投与すると、3ヶ月以内に2%ぐらい尿閉(まったくおしっこが出ない状態)が起こるので、高齢者への使用は注意が必要です。

ベータ3受容体作動薬

抗コリン剤と同様頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿などの症状が残る場合に上乗せし併用する。ベータ3刺激薬は、抗コリン剤と異なり排尿筋の収縮力悪化を来さないので、膀胱収縮力障害の予測される高齢者に比較的使いやすいとされます。

⑥PDE5阻害剤

2014年4月に発売された今までの作用機序とは異なった前立腺肥大症の治療薬です。その作用機序は、血管平滑筋を弛緩し、下部尿路組織における血流や酸素供給量を増加させた結果、組織障害、下部尿路症状を改善します。また、尿道、前立腺、膀胱頸部の平滑筋を弛緩することにより、尿道抵抗を軽減させ、排尿症状とともに、膀胱の過進展の改善を行う。そして、膀胱からの求心性神経活動を抑制することにより、蓄尿症状を改善すると考えられています。アルファ1遮断薬と同様に早期より効果を認めます。

⑦コリンエステラーゼ阻害薬

前立腺肥大症に対する有効性を支持する根拠はありません。前立腺肥大症術後の神経因性膀胱や低活動膀胱に有効です。

・外科的療法

薬物治療の効果が不十分中等度から重度の症状尿閉・尿路感染症・血尿・膀胱結石の合併症がある場合に考慮します。当院で可能な術式のみ抜粋します。

TURP: transurethral resection of the prostate(経尿道的前立腺切除術)

最も広く行われている標準的な手技であります。効果の持続性も高いです。合併症には、出血と灌流液による低Na血症(TUR症候群)があります。

Bipolar-TURP:(生理食塩水灌流経尿道的前立腺切除術)

従来のTURPに比べて効果は同等で、生理食塩水を用いるので低Na血症の発生頻度が低くなります。

TUEB®: transurethral enucleation with bipolar (経尿道的バイポーラ電極前立腺核出術)

レーザではなくバイポーラシステムを用い腺腫を経尿道的に剥離・核出します。前立腺体積によらず有用です。

尿道ステント留置

手術が不可能な患者さまに留置します。

排尿機能(男性・女性)について
夜間頻尿について

よく外来でご相談をうける「夜間頻尿」について解説していきましょう!
夜間頻尿の定義は次のようにされています。

夜間頻尿とは

つまり夜間トイレに行っても困っていなければ治療の対象になりませんが、2.3回起きるようになるとやはり困る患者さんは多いのではないかと思います。日本排尿機能学会の疫学調査によればこの夜間頻尿に関しては、3人に1人が夜間排尿をしています。(以下図)

排尿に関して最も困る症状は夜間頻尿!

夜間頻尿の原因は大きく分けて3つあります。
夜間尿量の増加、夜間膀胱容量の減少、睡眠障害
です。
これらが重なって起こる場合もあります。

夜間頻尿の原因

この3つの原因を細かくみていくと以下になります。

夜間頻尿の原因の詳細

夜間頻尿は全身性疾患の症状の1 つとしてとらえて診療に当たるのが良いと我々は考えています。
その為に夜間頻尿が気になる患者様は、

http://japanese-continence-society.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=15894

にアクセスし、排尿日誌(Bladder Diary)を印刷し3日間記録して頂いて外来を受診していただくと何が原因で起こっているか適切な指導ができると思います。

また一般的な夜間頻尿の対処としての生活指導を記載しておきます。

①1日の飲水量は体重の2%(50kgの人であれば50×0.02=1L)

②1日の尿量の目安(排尿日誌で確認してください)は20-25ml/kg (50kgの人であれば1000ml~1250ml)

夕方の30分以上の散歩

夕方に足を高く挙げた臥床、弾性ストッキングの装着

就寝4時間前の入浴

⑥就寝時の保温などです。

夜間頻尿でお困りの方は、是非実践してみてください。

下部頻尿機能障害について

下部尿路機能障害とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、なんらかの原因で尿を出したり(排尿)、尿をためたり(蓄尿)することが正常にできなくなった状態をいいます。(一般にいう排尿障害です)
下部尿路症状は以下の3つの症状(蓄尿・排尿・排尿後症状)に分けられます。

下部尿路症状(LUTS)

では、正常な排尿とはどのような状態を言うのでしょう?

正常な排尿とは?(成人の場合)

大まかな目安は上記です。1日の尿量が多い(多尿:体重×40ml(60kgの人であれば2400ml))場合には水分摂取過剰や尿崩症や糖尿病の可能性があります。
1回あたりの排尿時間が30秒以上の場合には、尿を出し切る膀胱の力が弱いか前立腺が肥大することによって出口が閉塞し正常な排尿が出来ない状態になっている可能性があります。
1回の排尿量が少なく、回数が多い場合には細菌性膀胱炎、過活動膀胱、間質性膀胱炎、前立腺肥大症(後述)の可能性があります。
1つでも気になる症状があればご相談ください。
まずは、実際の症例からみてみましょう。

(症例)

62歳男性。1年前からおしっこが近い、突然強い尿意が襲ってき、夜もおしっこで2回ほど起きるようになった。歳のせいであろうとあきらめていたが、思い切って泌尿器科を受診した。その結果、前立腺肥大症に伴う過活動膀胱と診断された。

まず過活動膀胱(活動し過ぎる膀胱)とは?

過活動膀胱は「突然我慢できないような尿意が起こる」「おしっこが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を呈する症状症候群です。多くの方がこの症状で悩んでいらっしゃることがわかっております。また、前立腺肥大症のある人の50~75%には過活動膀胱の症状があると言われます。

過活動膀胱の有病率

過活動膀胱の原因は、脳と膀胱を結ぶ神経路の障害で起こる「神経因性」のものと、それ以外の「非神経因性」のものがあります。

(1)神経因性過活動膀胱

脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷などが原因で起こります。脳と膀胱を結ぶ神経の伝達に障害が起きると、「膀胱に尿がたまったよ」「今はまだ出してはいけないよ」「もう出していいよ」「膀胱を収縮させるよ」「尿道を締めるよ」といった信号のやりとりが正常にはたらかなくなります。その結果、膀胱に尿が少ししかたまっていなくても尿を出そうとしたり、脳と膀胱の連携がうまくはたらかなかったりして、過活動膀胱の症状が出るのです。

(2)非神経因性過活動膀胱(神経路のトラブルとは関係ない原因)

○骨盤底筋のトラブル(「女性泌尿器科について」の項目を参照ください)
女性の場合、加齢や出産によって、膀胱・子宮・尿道などを支えている骨盤底の筋肉が弱くなったり傷んだりすることがあります。
そのために排尿のメカニズムが正常に働かなくなり、過活動膀胱が起こります。

○前立腺肥大症(「前立腺肥大症について」の項目を参照ください)
高齢化社会になりますます増えています。

ますます前立腺肥大症患者が急増!

○それ以外の原因
原因が特定できない場合も多々あります。いくつかの原因が複雑にからみあっている為と考えられています。原因の特定できないものや加齢(aging)によるものが、実際には最も多く存在しています。

次に低活動膀胱(活動しない膀胱)とは?

尿が近いなどの過活動膀胱とは逆で自覚症状が出にくい為、気づかれないことが多い病態です。前立腺肥大が無い男性、女性でも先ほどの下部尿路症状の排尿症状が主にある場合にはこれに相当する可能性がありますが、現在十分な診断基準はありません。
病態としては、①膀胱の収縮力が低下している状態(押し出す力が弱い)、②膀胱の収縮時間が短縮している状態(出し切るまで収縮しない)、③排尿の反射が十分に作動しない状態なのですが、原因としては以下が挙げられます。

低活動膀胱の原因

低活動膀胱の診断には膀胱エコーや排尿機能検査や神経学的所見を用います。
低活動膀胱での問題は、残尿(膀胱に残る尿)が多くなると尿路感染症を起しやすくなったり、極端な場合腎機能廃絶に繋がるということです。 これらのように下部尿路機能障害といっても原因、症状は人によって様々です。
内科を通院する患者さんに実際に行われたアンケートがあります。

下部尿路症状が良くなるとしたら治療を受けたい人

約8割の患者さんは下部尿路症状を煩わしく思っており、治療を受けたいと思っています。困ったことがあればまずはかかりつけの医師もしくは泌尿器科にご相談ください。

女性泌尿器について
女性泌尿器(ウロギネ)外来とは…

‘泌尿器科’と聞くと、一般的に男性のための診療科と思われる事が多いのですが、そのようなことはありません。 女性も男性と同じように頻尿や尿漏れ、排尿しにくいなど様々な症状が現れます。
しかし、ご存じのとおり、女性と男性では骨盤内の仕組みが違うため、同じ症状であっても原因や治療法が異なります。また、膀胱脱・子宮脱を始めとする女性に特有の病気もあり、実はオシモの不都合で悩んでおられる女性は多いのです。
女性泌尿器科(ウロギネ)外来とはそんな女性のための専門外来です。

頻尿

頻尿とは昼間8回以上、夜1回以上排尿することを言います。
その原因は過活動膀胱や間質性膀胱炎という病気によるものかもしれません。

過活動膀胱

頻尿と我慢のできない急激な尿意(尿意切迫感)が典型的な症状です。
水の音を聞いたり、触れたりすると急に尿意が出ることもあります。また、「おしっこがしたい」と思うと少しも我慢できず、何かの作業中でも途中でトイレに駆け込まないと漏れそうな感じがします。人によっては ”あとちょっと“が間に合わずに漏れてしまうこともあります。飲み薬で治療します。

間質性膀胱炎

原因は未だよく解っていませんが、膀胱に尿が貯まると下腹部に痛みが出ます。
そのため、自然と早めにトイレに行ってしまい頻尿となる事があります。食事との関係も指摘されていますが、飲み薬や内視鏡治療などで治療します。

尿漏れ

色々なタイプの尿漏れがあります。

腹圧性尿失禁

咳やくしゃみ、大笑いしたときなどにチョロっと漏れるタイプです。
グラグラ尿道、ゆるゆる尿道とも言われますが、尿道を支えている組織が障害されて起こります。残念ながら飲み薬では効果が乏しく、骨盤底筋体操や手術(TVT、TOT)によって治療します。

切迫性尿失禁

急激な尿意を感じ、あと少しが間に合わずに漏れてしまうタイプです。
過活動膀胱症状の一つで、内服で症状は改善します。

溢流性尿失禁

自分では排尿したつもりでいても、膀胱の中に尿が残っている事があります。残る尿が多すぎると、我慢しきれずに漏れてきます。

遺尿症

尿が貯まっている、貯まっていないに関係なく、気が付くと尿が漏れるタイプです。
“おねしょ”も遺尿症の一つです。内服薬で治療していきます。

骨盤臓器脱

出産などが影響し、骨盤内臓器(膀胱、子宮、小腸、直腸)が下垂することがあります。
夕方になると症状が悪化してくることが多く、症状としてはお股にピンポン玉のようなものが触れたり、物が挟まっている感じがしたり、排尿、排便しにくいなどの症状が出現します。

完全に治すには手術が必要で、ほとんどが膣からの手術(経腟手術)で治療することが出来ます。
手術以外の方法としてペッサリーリングや骨盤底筋体操などで加療していきます。

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